数字で見る女性問題の最近のブログ記事

女性のキャリアと出産

中西実子|2009年10月 5日

「男女平等」が意識の上で当たり前になったとは言え、子をもつとなると話は全く別でしょう。特に戦後の日本においては、男性が仕事も家庭も両方手に入れられた一方で、多くの女性はいずれか一方を選択せざるを得ないケースが多かったように思います。
 
しかし最近では随分様変わりしました。25~40歳の女性の有業率は過去30年以上にわたって増加を続け、いわゆる「M字型カーブ1.」を押し上げてきました2.。同時に出産の高齢化も進み、2006年には30~39歳が過半数を占めています。
[図を拡大]
 
女性が「仕事も家庭も」手に入れられる時代になったとすれば、少子高齢化も恐れるに足らずと感じます。しかし実際には、産むタイミングからして大問題です。一般的には早いとキャリア形成に時間がとれず復帰後も大した仕事に就けません。自分の話で恐縮ですが、私自身も周りの多くの女性も30代半ばまでは子を持つことを出世の足かせのように感じていました。ところが30代後半を迎えてキャリアがいくらか安定し出産を考えたときには、高齢出産の壁が待っていました。
 
出産の高齢化が進み、30代出産が過半数を占めるにも関わらず、高齢出産の現実はあまり知られていないのではないでしょうか。先の衆院選で民主党のマニュフェストに不妊治療への支援検討が追加で盛り込まれましたが、それまでの政治認識は「できるだけ早く産むことが望ましい」で止まっていたように思います。不妊治療は今のところ3.保険の対象外であるため、体外受精は1回数10万円からの負担になります。情報開示や患者保護も専ら医療機関の自助努力に委ねられ、ほとんど進んでいません。
 
高リスクを伴う高齢出産には多くの問題がつきまといます。安易な積極推進は「無責任」と映るかもしれません。しかし私にとって、高齢出産がもたらした精神面経済面での安定は、子育てという難事業を乗り切るには必要不可欠でした。また、40歳を目前にしての出産は、キャリアにも子育てにも悔いを残さないための事実上唯一の選択肢でした。今後も出産の高齢化に歯止めがかかるとは思えません。一般にも、もっと前向きに評価されてよいのではないでしょうか。


1. 女性の年齢別労働力率(人口に対する労働力人口の割合)がM字型のカーブを描く、従来の日本の特徴。1960~70年代、女性の平均初婚年齢は24歳前後で、20代前半に就業後、25~34歳に一時離職し、40代からまた働くという行動が多くみられたため。
2. 総務省統計局 就業構造基本調査(2009年)
3. 2009年8月、民主党が発表したマニュフェストの「確定版」に、不妊治療への公的医療保険適用の検討、情報提供および相談体制の強化が盛り込まれた

女性が活躍する条件

中西実子|2009年4月22日

前回、従来社会で実力を発揮し周囲にも認められた女性は一部の「エリート」と書きました。政府が「2020年までに指導的地位に女性が占める割合」として掲げる「少なくとも30%」という目標に対し1. 、女性の企業管理職は増加中とは言え未だ数%です。
 
「エリート」というと能力(skill)の議論に偏りがちですが、女性の社会進出には意思(will)が極めて重要な役割を果たしてきました。キャリア優先で他は多少犠牲にしてもやむなしとする意思、自ら先頭に立って難局に挑もうとする意思です。前者は、子供がいない女性の間ではかなり定着しました。問題は後者です。
[図を拡大]
 
新入社員面接をすると、数では優秀な女性はむしろ多いのに、リーダーシップやチームでの問題解決の経験を持つ人はごく僅かです。多くの男性が幼少時代からスポーツなどを通じ、リーダー(=競争の勝者)の下で団結して共通の目的や敵に当たる行為に慣れ親しむ一方、多くの女性にはそれがしっくりこない、従って社会に出てから効果的にリーダーシップを発揮できない/する気になれないようです。
 
男性社会の論理に合わせて「うまく」やれる女性はたかだか全体の1割ではないでしょうか2. 。女性の社会進出のクリティカルマス(閾値)を仮に3割とすると、現状今ひとつ乗り切れていない女性も多数含まれます。そこで、もう少し女性に合ったゲームのルール、彼女たちが共感できる新しい形のリーダーシップが必要になります。
 
男女平等を主張する攻撃的なフェミニズム型リーダーシップは歴史的役割を終えました。また、女性を利用して権力者(男性)におもねる、男性の何倍も働くといったやり方には、多くの女性はついて行けません。
 
IRISの試みが興味深いのは、それまで自然に男性に伍してきた優秀な女性たちが、突然のキャリア中断に直面して、互いに協力し自分たちで活路を開こうとする点です。ここに、時代が求める新しい女性リーダーシップの一つの発現がある、と私は思うのです。


1. 内閣府男女共同参画推進本部決定(平成15年)
2. 女性の就労率が約5割、うち半数以上が非正規労働者、男女合わせた企業の管理職比率が1割弱であることからざっくり推定

女性を活用する組織

中西実子|2009年2月24日

経営コンサルティング会社マッキンゼーは、昨年Women's forum1.と共同で欧州企業を対象に「Women matter」という報告書を発表しました。企業における女性活用の重要性を謳い、「経営層の女性比率が高い企業は業績も良い」という分析が話題を呼びました。
 
日本でも2003年に経済産業省が、女性雇用と企業利益率の相関について同様の分析をしています2.。当報告は更に踏み込んで、経年で同じ企業の女性数と利益率の変動の相関を見ている点が特徴的です。結果、両者には相関がないため、好業績の原動力は女性比率ではなく、女性が活躍できるような企業風土だとしています。つまり、能力・成果重視の人事評価を行い、多様な働き方を可能とする企業は、女性を含む多様な人材を上手に使って利益を上げているのであり、そうでない企業が女性比率だけ高めても利益は増えないということです。 [図を拡大]
 
企業も多様化する社員のニーズにある程度応えていかなければ優秀な人材を獲得・維持できないことは、欧米では共通認識となっているのではないでしょうか。日本企業も世界市場でグローバル経営を展開していく上では、人材獲得競争の現実や効率性の問題を無視できないはずですが、実際には長時間労働や年功重視といった「日本的」慣行が残っています。内閣府の調査では過半数の日本人男性が週平均50時間以上働いており、これは欧米の2割以上の水準です3.。長時間労働は男性の家事分担をも阻害するため、多くの女性には二重の負担としてのしかかります。共働き世帯での夫の家事・育児・介護などにかける時間が1日平均30分なのに対し妻は4時間15分と、男女比は他の先進諸国の約4倍です4.
 
不況の進行もあり、労働環境の劇的な改善は当分期待できそうにありません。社会で活躍する女性は確かに増えましたが、変革の強い原動力となるには時間がかかりそうです。まだまだ少数派ですし、そもそも男性社会の論理に合わせる意思や能力を備えている点で「エリート」とも言える存在だからです。
 
より多くの女性の活躍、ひいては日本経済の今後の発展に向けて、私たち一人一人ができることは何かあるのでしょうか。


1. http://www.womens-forum.com/
2. 経済産業省男女共同参画研究会報告「女性の活躍と企業業績」(平成15年)
3. 内閣府「男女共同参画に関する国際比較調査」(平成14年度調査)
4. 内閣府「男女共同参画白書(概要版)平成20年版」

「女性活用」の可能性と意義

中西実子|2009年1月24日

私がIRISの活動に興味をもったきっかけは、「キャリアが中断した優秀な女性を労働力として活用する」という、政府や大企業でもなかなか手をつけられないでいる社会問題に一個人が取り組もうという「心意気」に打たれたことです。
 
男 女平等が「当たり前」でなかった均等法前の世代と違って、今は女性が女性問題を論ずること自体「ちょっと格好が悪い」といった感覚かと思います。少子高齢 化の進展で、現状ですら米国の7割と低迷する我が国の労働生産性が更に低下することが広く懸念されています。その直接の対策となり得る女性の活用自体は、 総論としては反対が少ない問題でしょう。 [図を拡大]
 
しかしデータを見ても、日本で女性の活用が目覚ましいということは読み取れません。女性の雇用参加は年々増加し全体の4割を超える1.一方、過半数は非正規労働者です。管理職の女性比率は1割未満2. で、女性の平均賃金は男性の約半分、他の先進国と比べ中高年層で差が大きく、縮小スピードも速いとは言えません 。3.
 
実際、コンサルタント時代に知己を得た企業幹部の方々が、雑談の中で女性登用の難しさを真剣に嘆かれるのを何度も耳にしています。企業の努力不足はもちろんあるでしょう。日本の労働慣行、年功序列や長時間労働は大きな障害です。一方で厚生労働省などが行っている各種調査からは、女性本人の意識の問題も浮かび 上がっています。私自身、中間管理職になり、自分のことは完全に棚に上げて「女の人は面倒だなぁ」「女性の敵は女性だなぁ」と感じたことが一度ならずあります。
 
多大な労力を投入して望む結果が得られなければ、期待経済効果も限定的です。先の見えない不況下で、働き盛りの男性にすら職の保障は与えられていない状況です。理想論を超えて企業が女性の活用を推進する意義はどこにあるのでしょうか。次回はこの点について考えてみたいと思います。


1. 総務省統計局、「女女格差」(橘木俊詔)
2. 厚生労働省、「女女格差」(橘木俊詔)
3. 厚生労働省、各国統計、「女性が変える日本経済」(小峰隆夫)

このアーカイブについて

このページには、過去に書かれたブログ記事のうち数字で見る女性問題カテゴリに属しているものが含まれています。

前のカテゴリは戸矢理衣奈のIRIS日記です。

次のカテゴリは米国支部長通信です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。